2016年2月20日土曜日

人間の分際 / 曽野綾子

こんな本もあるんですね。今までの著作から一言一言を抜粋して一冊の本を作るという。
ポップ・ミュージックであれば、コンピレーションといったところでしょうか。

著者の基本的はスタンスは、
  • よいこともあれば、悪いこともある
  • 心の中は、いい思いもあれば悪い思いもある
  • 失敗もあれば成功もある
といった、清濁併せ飲んだところに人生の豊かさがある、というものと、
キリスト教者としての、
  • 神と結ばれることによって一人の人間は「自分」を持てる
というものを併せ持ったもののようです。
努力と結果は決してストレートには結ばれず、むしろ結ばれないところに学びや救いがあるという主張は、むしろ東洋的だな、と思います。

人間は50才から先の負け戦の生き方が大切なのだそうです。僕にとっては気になる一言です。

2016年2月17日水曜日

ザ・セカンド・マシン・エイジ / エリック・ブルニョルフソン, アンドリュー・マカフィ

前半は、セカンド・マシン・エイジの進展ぶりを語り、後半ではその進展による、来るべき未来の社会の姿と対策に言及していますが、圧巻なのは前半部分です。

マシン・エイジとは工業化社会のことで、ファースト・マシン・エイジは、蒸気機関の発達と電気社会の到来です。産業革命以来、人類は今までの数百万年の歩みから、一気に別次元に飛びました。
同じことが、AIとロボット化によって現在進行中で、それがセカンド・マシン・エイジとのことです。Googleによる自動運転自動車を典型的な例として、想像できない世界へ飛躍していく可能性を語っています。

セカンド・マシン・エイジは、ハード、ソフト、ネットワークにおける
  • 指数関数的高性能化
  • デジタル化
  • 組合せ型イノベーション
という3つの特徴を持って進んでおり、それにより爆発的にテクノロジーが発展していくというものです。最高性能のメインフレームと同性能が今やiPadに、音声や画像の認識技術、センサーとの組み合わせ...
おのずと、機械と人間との関わりや、労働のあり方といったものも、新たな時代に入るでしょう。明るい未来もあれば、弊害も出てきます。

本書は「運命を決めるのはテクノロジーではない、私たちだ」という言葉で締めくくられています。


第1章 人類の歴史の物語
「技術は神からの贈り物、おそらくは生命の次に重要な贈り物だ。技術は文明、芸術、科学の母である」フリーマン・ダイソン
第2章 機械とスキル
「高度に進歩した技術はどれも魔法と見分けがつかない」アーサー・C・クラーク
第3章 ムーアの法則とチェス盤の残り半分
「人類の最大の欠陥は、指数関数を理解できないことだ」アルバート・A・バートレット
第4章 デジタル化の大波
「自分が話すことを数字で表せるなら、そのことについて少しは理解していると言える。だが数字で表せないなら、たいして理解しているとはいえない」ケルヴィン卿
第5章 組合せ型イノベーション
「いいアイデアを出したいなら、まずはできるだけたくさんのアイデアを持たなければならない」ライナス・ボーリング
第6章 人工知能とデジタル・ネットワーク
「この驚くべき電気機械……この機械によって計算やいろいろなことがはるかにたやすくできるようになった……これはおそらく、驚異的な進歩の前兆である」ピエール・テイヤール・ド・シャルダン
第7章 セカンド・マシン・エイジのゆたかさ
「経済学上の誤謬の大半は、パイの大きさは決まっており、ある人が大きく切り取ったら他の人の分は小さくなるという思い込みに由来する」ミルトン・フリードマン
第8章 GDPの限界
「国民総生産は、高貴な詩作も知的な議論も数えない。人類の機知も勇気も、知恵も学びも、思いやりも博愛も。つまりGNPはあらゆるものを計測するとしても、人生を価値あるものにする要素は計測しない」ロバート・F・ケネディ
第9章 セカンド・マシン・エイジの格差
「貧富の不平等は、あらゆる共和国に最も古くからある致命的な病である」ブルタルコス
第10章 最強の勝ち組はスーパースター
「普通の人間50人分の仕事は、1台のマシンでこなすことができる。だが並外れた人間の仕事は、どんなマシンでもこなせない」エルバート・はバード
第11章 ゆたかさと格差は何をもたらすか
「すでにゆたかな人がよりゆたかになるかどうかではなく、あまりに貧しい人にどれだけ十分に与えられるかどうかによって、我々の進歩は測られる」フランクリン・D・ルーズベルト
第12章 個人への提言
「コンピュータなんて役に立たない、答えを出すだけなんだから」パブロ・ピカソ
第13章 政策提言
「たびたび変更される一時的な宗教である。だがその政策が有効である間は、使徒の熱意をもって追求すべきだ」マハトマ・ガンジー
第14章 長期的な提言
「労働は、人間を人生の三悪、すなわち退屈、悪徳、困窮から救ってくれる」ヴォルテール
第15章 テクノロジーと未来
「人間を自然の難題から遠ざけてくれるように思われた機械の利用は、反対に人間を一層きびしくそれらの問題に直面させることになる」アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

2016年1月11日月曜日

ジャック・マー アリババの経営哲学 / 張燕

僕はアリババもタオバオもアリペイも使ったことがないし、中国にいてその興亡を目の当たりにもしなかったので、そのすごさは正直全く分からない。
なぜ彼の会社と事業が成功したのかも良く分からない。
ただ、国家の後ろ盾があり競争なしに成長したのではないことは分かった。

経営哲学、というほど何か特別なことが書かれているわけではない。
もしかしたら、中国の膨大な中小企業をターゲットにしたという目の付けどころが良かっただけかもしれない。
しかし、馬雲(ジャック・マー)のリーダーシップや人をやる気にさせる能力があったからこそ、これほどの成功を収めることができたのだろう、ということは理解できた。

彼は、成功渇望で生きているのではなく、辛いことも苦しいことも成功と同じように人生の経験だと言う。人生の達観という意味では、アメリカの経営者よりも懐の深さを感じる。

biztikara.com

2015年12月22日火曜日

ランド 世界を支配した研究所 / アレックス・アベラ

原題は"Soldiers of Reason: The RAND Corporation and the Rise of the American Empire"ということだから、「合理性の兵士:ランド社とアメリカ帝国の勃興」といったような意味でしょうか。
"RAND"とは、"Research and Development"の略なので"R&D"ということになります。

第2次世界大戦後、空軍のシンクタンクとして始まり、冷戦時の核戦略理論の支柱となり、ケネディ政権に大量に人を供給し、レーガン政権で軍拡を先導し、ブッシュ政権ではネオコンとしてイラク戦争を主導していきます。
初めは、対ソ連という反共から、次第にアメリカ的理想と合理性を追求し、世界をアメリカ的にしていくことが組織の目的となっていく姿を描いています。

レーガン以降は、ランドが直接関与したというより、ランドの中心的人物でこの本の主人公のようになっているウォルステッターのシカゴ大学時代の教え子や信奉者たちの活躍ということになります。
ラムズフェルド、ウォルフォウィッツ、リチャード・パール、コンドリーザ・ライスたち。無能なブッシュは、多様な意見を尊重せずに彼らだけを信じて、無謀な戦争に突き進んでいってしまったのでしょう。

第二次大戦での日本への無差別空爆と原爆投下について、著者が批判しているところはアメリカの良識を感じます。
あとがきの冒頭で取り上げている「もしこの戦争に負けていたら、我々は全員、戦争犯罪人として刑事告発されていたことだろう」というルメイ元空軍将軍の言葉はいろいろ考えさせられます。
第一次大戦は一時はドイツが勝利の直前まで行ったことを考えると、単に勝負に負けただけで、国家破産寸前まで賠償を負わされたことは理不尽に感じます。
日本もバカな戦争はしたけど、自己否定をするまでは悪行を尽くしてたわけではないのです。

2015年12月7日月曜日

ジャック・ウェルチ わが経営 jack:Straight from the Gut / ジャック・ウェルチ、ジョン・A・バーン

上巻にほぼすべてが詰まっています。
官僚主義の打破、バウンダリレス、ワークアウト、家族的な雰囲気...
自分らしくあろうとし、巨大な会社組織と敢然と戦いを挑んだ勇気ある男の物語です。

ここにあるのは、会社への愛でもなく、事業への執着でもなく、ただ自分でありたいという思いだけです。母の教えと愛情が強調されています。
みんな官僚主義は嫌いですが、普通はここまでやれません。創業者でもないのに、大企業を文字通り「変革」したのですから、ものすごいことです。

下巻は、4つのイニシアチブ(サービス化、グローバル化、シックスシグマ、Eビジネス)やNBC買収などについて書かれていますが、自慢話にも聞こえるし、アメリカに生活してなければ、ピンときません。
しかし、こういった戦略は当時の日本侵攻の危機意識から来ていますし、シックスシグマやバウンダリレスなどは日本経営から学んだことだろうと思いますので、少し日本を誇らしく思います。

僕は、本人に接したことがないので、確たることは言えませんが、目の前の存在だとしたら、正直苦手なタイプですね。自信家で押しが強い、自分が触れたものを推し、時には強圧的、冗談が笑えない。避けたいですね。

しかし、名だたる経営学者やコンサルタントは、いまだウェルチのやり方の影響下にあるのではないかと思うと、本当に不世出の経営者だなと感心します。
ただ、この本に書かれてあるのは神のような経営者ではありません。

2015年11月14日土曜日

14歳からの哲学 考えるための教科書 / 池田晶子

最初は考えることとは何か、から入り、少し面倒な感じがしたし、科学(物質科学)よりも精神を優先する考え方はなじまないところもあったが、はっと気付かせてくれることもいくつかあった。

まず、自分を愛する、ということだ。自分を愛せない人がどうして他人を愛せるのか。愛するということと愛されたいということは、全く違うことを言っている。
ホイットニー・ヒューストンの歌にもあるように、自分を愛することは最も大切なことなのだ。自分の可能性を信じることができる人になってはじめて、人を応援できるようになる。

それと、死の意味と「今」ということだ。
宇宙は膨大な継続が続いており、僕もその継続、そして宇宙の一部である。地球上の生物はDNAのキャリアととらえたのは、ドーキンスだった。その意味で死というは意味を持たない。したがって死は恐れることではないのだ。
死を恐れず、「今」は自分の可能性をただ応援すること、そういう生き方を続けることだ。

すべてのものは二度作られる。人の「理想」が現実を作り上げる。これも忘れてはならない。

2015年11月7日土曜日

ジャック・ウェルチのGE革命 / ノエル・M・ティシー, ストラトフォード・シャーマン

ジャック・ウェルチは前世紀後半のアメリカ企業をリードしたスター経営者であるのはもちろんだが、いまだに日本でも最も影響力のある人ではないだろうか。

この本の日本版の題名には「革命」という言葉が使われているが、本書を読むとまさしく「革命」的だということが分かる。事業を売り買いし、従業員を不安に陥れ、新しい価値観を示し、組織内の討議で価値観の共有を進めていく。ある意味、共産主義革命や毛沢東のやり口と似ているのかもしれない。

驚愕なのは、こうしたことを始めたのが、GEが業績的に絶好調だった時だ、ということである。リーダーにとって、時代を見通し先取りする力の重要性が分かる。あるいは、ウェルチが傍流の小さな事業部門出身だということも関係しているのかもしれない。巨大な官僚組織や内向きの組織風土に辟易していた、ということは容易に想像がつく。

いずれにしても、こうしたことを進めていくには、驚異的な精神力が必要だろう。アイデアを思い付いても、強力な抵抗に合い、精神的にズタズタになるからだ。最後の本人へのインタビューで、「多くの人に同意を得ようとしすぎで、実行が遅くなってしまった」と言っているように、強靭な精神力で力づくで推進していったのではなく、ウェルチ自身も悩み、苦しみながらも、タフでフェアな経営者たらんと努力した結果なのだということも感じられ、少し安心した。

この本は、偉大な経営者や改革を進めた当事者の自慢話ではなく、改革の途中の社内の混乱や抵抗も描いた、トゥルー・ストーリーです。