2014年9月16日火曜日

現代中国の父 鄧小平 / エズラ・F・ヴォーゲル

1989年の天安門事件は、若い僕にとって非常に衝撃的だった。
ゴルバチョフが改革を行い、世界はデタントへと動いていた。
中国でも、鄧小平が起用した胡耀邦や趙紫陽がより自由主義的な改革を行っていた矢先の出来事に、とてもがっかりし、老いた鄧小平を恨んだのを覚えている。
この本では、
  • 列強への反感から共産党へ傾倒
  • 軍事的才能を認められての栄達
  • 独裁政治に翻弄され左遷
  • 復活と権力奪取
  • 政治改革と、新旧派閥のバランス
といった、彼の一生を豊富なデータでつづっているが、残念なことに、心情は語られていない。
ただ、毛のように、教条主義的な共産主義者ではなく、中国の独立運動に立脚した現実主義者であるし、レーニン主義よりももっと原始的な共産主義を想像していたのだろうとは思った。
一番印象的だったのは、改革開放政策の中での日本の役割だ。鄧小平は日本を目標として、日本に教えを請い、日本も惜しみなく教えた。
強大化した現代中国が、こういった過去を忘れて、自らの存在意義の主張のみに日中関係を捉えているかのような動きは、非常に残念だ。