2023年4月21日金曜日

銃・病原菌・鉄 / ジャレド・ダイアモンド (1997)

Guns, Germs, and Steel: The Fates of Human Societies / Jared Diamond

1998年にピューリッツア賞を受賞した本書は、文明がどのように誕生し、拡散し、現代社会に影響を与えているかを論じています。

ニューギニア人のヤリという友人からの問い「欧米人は様々な物資を作ってニューギニアにもたらしたが、ユーギニア人は何も作り出さなかった。その差はどこから生まれたのか」への回答として書かれています。

欧米人的な発想の、生物学的に欧米人が人種として優れていたからだ、という理由付けを著者は明確に否定し、地理学的なところに答えを求めます。
文明の始まりは、それまで狩猟採集生活をしていた人類が、農業・畜産による定住生活を始めたことに期限があると言います。それが人口の累積を加速し、知恵の蓄積と拡散を容易にし、さらに文明が発展していくという正のスパイラルが生まれたと。

ユーフラテス川周辺の肥沃三日月地帯では、たまたま栽培に適した麦や豆類が自生していてそこに文明が生まれます。ユーラシア大陸は東西に広いことで、気候が似ていて、栽培が広がりやすかった。対して、アメリカ大陸やアフリカ大陸は南房に長いことから、同種の栽培種の栽培方法が地理的に断絶し、核酸が生まれなかった。この地理的優位性から、ヨーロッパ、中国などの文明が先行して発展し、植民地という形で別の大陸を侵略し、その貧富の差が現代にまで影響を及ぼしている、というのが大まかな本書の主張です。

確かにサピエンスは生まれてから今までおそらく大きな進化はしていないと思われます。狩猟採集生活をしていた頃の人類と現代の人類は脳の構造も同じですが、現代の方が格段に生活が快適になっています。それは知恵や技術の蓄積が進んだからに他なりません。

同じことは民族間でも言え、生物学的には音字でも、知の蓄積度によって生活に差が出ている、と言えます。

途中、コルテスにによるアステカの征服や、欧米人によるアボリジニの侵略、アメリカ先住民への迫害など、凄惨な事実の記載があり、憤りを感じますが、著者の関心はそこにあるのではなく、その圧倒的な武力の差はどこから生まれてきたのか、ということにあります。

面白いのは、病原菌耐性への言及です。武力制圧よりも殺傷力があったのは病原菌で、家畜から発祥した病原菌に耐性があった欧米人が新大陸に乗り込むことによって、耐性のない先住民のほとんどが死んでしまったとのこと。驚きの事実です。医学博士である著者の面目躍如といったところです。

さらに、言語学的研究から、南太平洋に広がる民族の起源は台湾であることも突き止めます。この民族ははるかマダガスカルまで到達します。

人類の文明の歴史は、民族による多民族の侵略の歴史であり、その侵略が現代を形作っています。
G7のうち6つは欧米で占められていることがその証左です。

中国は途中まで欧米をリードしていましたが、技術の発明を産業革命に発展させられなかったことで(これも多分に偶然だと思われる)、現代の欧米のリードを許してしまいました。習近平のやろうとしていることは、この再逆転でしょう。

  • https://www.soshisha.com/book_search/detail/1_1005.html
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