2023年7月4日火曜日

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? / フィリップ・K・ディック (1968)

Do Androids Dream of Electric Sheep? / Philip K. Dick

『ブレードランナー』を観直してみました。なんとなくベースとなる素材は同じですが、似て非なるものですね。
リドリー・スコットの描く世界は、おどろおどろしく、いかにもハリウッド的な演出は、ディックの書く文学的な世界とはかけ離れています。ハリソン・フォードが嫌がったのも分かります。

だいたい「電気羊」って?
何の説明もなくタイトルに提示するあたりがにくいですね。しかも「電気羊を夢見る」ですからね。
とは言っても、冒頭のシーンから電気動物が登場し、アンドロイドも登場し、あと謎は「夢」だけになりますが。

舞台は、戦後小説によくありがちな、核大戦後の世界。人類はすでに火星進出を果たしています。
アンドロイドを作り出し、奴隷として使っているところに、人種問題も隠れています。
単純な、人間対アンドロイド、という構図の中で、宗教を持ち出してくるところが、一筋縄ではいかないところです。
しかも、「フォークト=カンプフ感情移入度検査法」という微妙な手法でアンドロイドと人間を区別したり、ちょっとピンボケな人間を登場させたり、荒野で人造動物を拾ったり、とそれぞれのエピソードに何の意味があるのかよく分からない形でストーリーが進んで行きます。

文体はハードボイルド。荒々しくスピード感のある展開に、不思議な設定、ディックの作り出した独特の世界です。

人間は本物の生物を夢見ますが、人造人間は人造生物を夢見るのでしょうか?

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