2024年8月31日土曜日

OTOMO THE COMPLETE WORKS 12 / AKIRA 1 / 大友克洋 (1982-83)

Complete Works シリーズの第12巻。

第一期が遅れて、代わりに第二期の最初の配本が始まることになったらしい。逆にありがたい。

「AKIRA」はヤンマガに連載されてましたが、単行本化するにあたり、少し手を入れている模様。加筆、修正、削除、差し替え、ページやコマの入れ替え、仕上げの追加、描き下ろし、各話の扉絵の削除等々。それらをできるだけ連載当時のものに戻したのが今回の Complete Works の模様。どっちもいいけど、すでに単行本が出回っているので、価値をつけようとすると、そういうことになるのね。

いずれにせよ、改めて読むとそれまでの作品に比べてダントツに面白い。
ストーリー的には、主人公たちが若者であること、近未来を描いていること、超能力を主題にしていることなどが面白さを際立たせている理由でしょう。
主人公たちは15歳という、極めて若い年代。怖いもの無しで極端、どの時代でも通じる若者像です。
それにファッショナブルでもあります。それまでの大友克洋作品にはないパターンの。暴走族という、一見オールドファッションな世界でありながら、身なりはこぎれいなんですよね。顔立ちも端正だし。

絵の爆破シーンとか建物が壊れるシーンは、「童夢」以降お手のもの。それに速さの描写や表現が素晴らしく、ストーリー展開と相まって、全体的にスピード感のある作品になっていると思います。そこも魅力ですね。

映画からの影響も強く感じられます。何という技法かは知りませんが、次のシーンに前のセリフが被さるのは多用されてますし、光源の加減で影が大写しになるような表現もあります。面白いですね。

時代は2019年。すでに過ぎてますが、2020のオリンピックを控えた東京が舞台で、東京オリンピックを予言しているところにまず驚きました。実際はコロナで2021年になりましたが。
さすがに1982年じゃ携帯電話までは予想できてなかったようで、通信手段は電話的なものか口頭です。物語に登場するようなかっこいい形のバイクは開発されていません。

ちなみに、主人公の「金田」というのは、大友克洋が敬愛する「鉄人28号」からきているとのこと。アキラの番号も28号。ちなみにのちなみにでいうと、鉄人28号の「金田」はプロ野球のピッチャー金田正一からきているらしい。確かに鉄人やからね。

残念なのは、巻末に他の Complete Works シリーズのような「解説」がついていないこと。「AKIRA」全巻の最後にあることを期待します。


  1. 第1回 ヤングマガジン1982年12月20日号
  2. 第2回 ヤングマガジン1983年1月3日号
  3. 第3回 ヤングマガジン1983年1月17日号
  4. 第4回 ヤングマガジン1983年2月7日号
  5. 第5回 ヤングマガジン1983年2月21日号
  6. 第6回 ヤングマガジン1983年3月7日号
  7. 第7回 ヤングマガジン1983年3月21日号
  8. 第8回 ヤングマガジン1983年4月4日号
  9. 第9回 ヤングマガジン1983年4月18日号
  10. 第10回 ヤングマガジン1983年5月2日号
  11. 第11回 ヤングマガジン1983年5月16日号
  12. 第12回 ヤングマガジン1983年6月6日号
  13. 第13回 ヤングマガジン1983年6月20日号
  14. 第14回 ヤングマガジン1983年7月4日号


https://otomo-complete.com/list/details/9784065367858.html

2024年3月20日水曜日

OTOMO THE COMPLETE WORKS 2 / BOOGIE WOOGIE WALTZ / 大友克洋 (1974-76)

Complete Works シリーズの第2巻、大友克洋20歳〜22歳の作品です。
全て「漫画アクション」に掲出されたものです。

この頃はまだ漫画が上手くないですね。
大友克洋でもこういう模索時代があったことに驚きました。
背景が比較的雑で、カット割や絵がストーリーとして分かりづらい。
その代わり、実験的なコマの使い方や絵の表現が多いのも特徴です。
この巻の途中くらいからグッとよくなってきます。ものすごい成長だなと思います。
そういう意味では、最初の「BOOGIE WOOGIE WALTZ」と最後の「鏡地獄」では、随分印象が変わってますね。

ストーリー的には、ミステリーものが多いのと、都市の最下層を生きることの「どうしょうもなさ」を描いているものが多いですね。この傾向はしばらく続きますが。
若者らしく青春の葛藤を描いたものもありますが、全体的には大人の視点が中心で、20歳そこそこの人が描くような題材じゃないです。

巻末の解説で本人も言っていますが、当時「イラスト」に強く影響を受けていたとのこと。
ピーター・マックス、伊坂芳太良、宇野亜喜良の名前が上がっています。

また、同時にジャズの趣味も絵の中にのぞきます。
Miles Davis、Wayne Shorter、Charles Mingus らのアップが突然背景に描かれています。
本人曰く、この時期 "On the Corner" に衝撃を受け、Weather Report にハマっていたそう。
"Mysterious Traveller" が出たのが1974年ですから、リアルタイムですね。
ちなみに "BOOGIE WOOGIE WALTZ" は Weather Report  の3枚目のアルバム"Sweetnighter" に入っている Joe Zawinul の曲で、バンドのファンキー路線への転換点となる重要曲です。

  1. BOOGIE WOOGIE WALTZ [週刊漫画アクション 1974年4月25日号]
  2. BOOGIE WOOGIE WALTZ [週刊漫画アクション 1974年5月23日号]
  3. ONE DOWN [週刊漫画アクション 1974年7月4日号]
  4. 目覚めよと呼ぶ声あり CHORAL PRELUDE WACHET AUF -「コーラル」より前奏曲 [週刊漫画アクション 1974年8月15日号]
  5. 心中 -’74- [週刊漫画アクション 1974年10月3日号]
  6. 傷だらけの天使 第一話「暗夜行路」 [週刊漫画アクション 1974年10月31日号]
  7. 傷だらけの天使 第二話「パック 糞面白くもなかった今日の終わりに」 [週刊漫画アクション 1974年12月5日号]
  8. 傷だらけの天使 第三話「短距離走者の連帯」 [週刊漫画アクション 1975年2月6日号]
  9. 傷だらけの天使 第四話「醜悪の軋み」 [週刊漫画アクション 1975年3月6日号]
  10. 傷だらけの天使 第五話「チュンパラブギウギチュンパラブギ」 [週刊漫画アクション 1975年6月5日号]
  11. 傷だらけの天使 第六話「スカッとスッキリ」 [週刊漫画アクション 1975年8月7日号]
  12. 辻斬り [漫画アクション増刊 1975年8月23日号]
  13. 傷だらけの天使 第七話「ROCK」 [週刊漫画アクション 1975年11月27日号]
  14. [漫画アクション増刊 1976年1月3日号]
  15. 鏡地獄 [別冊漫画アクション 1976年3月12日号 原作:江戸川乱歩]

https://otomo-complete.com/list/details/9784065273203.html