2018年12月2日日曜日

マネー・ボール / マイケル ルイス (2003)

MONEYBALL

The art of winning an unfair game by Michael Lewis

ブラッド・ピットの映画を見てずっと気になっていた原作を読んでみました。
基本的には、原作とかけ離れたとことろはありません(ノンフィクションですから当たり前ですよね)が、映画が主人公ビリー・ビーンだけにスポットライトを当てているのに比べ、原作はもっと広範な人物の物語も紹介しています。

例えば、ビリー・ビーンの前任のゼネラル・マネージャーであるサンディ・アルダーソンは、野球を統計学的な手法で眺め直そうとしたビル・ジェイムズの著作を全部持っており、ビリー・ビーンも影響を受けます。例えば「エラー」は主観に基づいた判定であり、分析に値しない。僕も前々からファインプレーは、スタートダッシュの遅い選手や守備位置がまずい選手がやっと追いついたプレーであることも多いんじゃないかと思ってましたので、まったく同感です。とすればヒットの定義も怪しくなる。後にボロス・マクラッケンという人が、フェアゾーンに飛んだ打球がヒットになるかアウトになるかは全くの運ではないか、と言い出したことも紹介していますが、もしかしたらそうかもしれません。

腕を手術して捕手をあきらめたが、アスレチックスに一塁手としてトレードされたスコット・ハッテバーグ、アンダースローというメジャーでは特異な投げ方をしているチャド・ブラッドフォード、デブであるがために他球団に見向きもされない大学選手ジェレミー・ブラウン。
みんな「傷もの」ですが、アスレチックスの中では価値を認められ、活躍します。

この本で感じたのは3つ。
1つめは、投資効率の追求です。選手の給料が高くなったことにより、より選手を選ぶ力が重要になります。そのときにイチかバチかではなく、より活躍の確率の高い選手を選ぶにはどうするか。活躍している選手の過去を振り返り、分析し、より確率の高い選手をドラフト指名する、あるいはトレードでもらい受ける。オーナーが出せる金の上限がある中で、どうやりくりするのか、ビリー・ビーンはそればかり考えていたのではないでしょうか。

2つめは、統計分析の重視です。選手選びもそうですが、試合に勝つにはどうするのか。試合に勝つことが集客に最も影響があることが分かっていますので、イコール経営の好転につながります。そのためには、相手よりより多く得点すること。得点のために一番きくのが、出塁率と長打です。要はアウトにならないことですね。そのために作戦上では、犠打、盗塁を嫌い、四球を選ぶことを奨励し、ドラフト、トレードでは体格や運動神経をあまり考慮せず、出塁率を重視します。

3つ目は、分析に基づいた人の評価です。従来も野球選手は数字で評価されていたのでしょうが、評価軸がチーム戦術と完全に一致しています。運に任せたヒットや守備の評価(打率やエラー数の評価)を、打球の初速や方向、着弾点を記録して、あるいは何アウトで何塁の場面だったのか、相手は右投手なのか左投手なのか、球種は、といったことを記録して分析していこうという動きがありますが、それを評価にも使えるのでしょう。翻って、会社の評価ってどうなんでしょう。まったく科学的ではありません。

著者は、こういった手法を「おたく」とよびますが、カッコいいですよね。

0 件のコメント:

コメントを投稿