2020年7月24日金曜日

82年生まれ、キム・ジヨン / チョ・ナムジュ (2016)

これは著者とすべての女性の物語であると同時に、僕の物語です。
涙が出、胸が痛みました。
フィジカルにです。

男と女の間には埋めようのない溝があり、理解できない悲しさがありますが、人と人との間も本当の意味で理解ができない悲しさがあります。
男には男の言い分があり、女には女の感じ方があります。
何気ない一言でも、他人は思いもよらない感じ方と理解をするものです。

この小説は、現代の女性のありのままの姿を描き、共感を得ています。
82年生まれの女の子の一番多い名前が「キム・ジヨン」というリサーチに基づき、その年代の女性のリアルを描いています。
と同時に女として生きる、生きづらさのようなものがずっと底辺に流れています。
韓国の特殊性も少しはありますが、ほぼ日本人女性の物語としても同じようなものでしょう。
韓国では男尊女卑の価値観が強いと言い、この小説でも年配の男性は時代錯誤の行動様式から抜けられませんが、ジオンの同年代の男たちは、現代らしく男と女は平等だとわかっていて、いたってリベラルな考え方の持ち主に描かれています。
でも、本当の意味で女の人生の生きづらさ、悲しさ、辛さはわかっていないのです。

僕の妻はジヨンより15才ほど年上です。大学を出て働いていた妻は子供ができて退職を選びました。僕よりも収入が高かったにもかかわらずです。望んで就職した業種だったにもかかわらずです。
その時は、それが普通だと思っていました。でも普通かどうかなんか関係ないのです。
仕事をしていない間、資格を取り、子供を預けられるようになると再就職しました。
子育てに責任を強く感じた妻は、責任を一人で背負い込み、あるとき僕との会話の中でプッツンと糸が切れてしまいました。
ジヨンがあるときから精神に異常をきたしたのと同じように。
何も共感してやれず、何も助けてあげられませんでした。

この小説の中の男は、夫以外は名前を与えられていません。家族であっても彼氏であっても。
フェミニズム、というイズムを強く意図している小説ですが、それだけではない、心を強く揺さぶられる小説です。

筑摩書房 https://www.chikumashobo.co.jp/special/kimjiyoung/

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