2018年11月25日日曜日

ジョブ理論 / クレイトン・M・クリステンセン (2016)

イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム

COMPETING AGAINST LUCK
by Clayton M. Christensen, Taddy Hall, Karen Dillton, and David S. Duncan

"イノベーションのジレンマ" のクリステンセン教授の最新の本です。
通勤途上の客がドライブスルーでミルクシェイクを買うのは、「車の中で時間をつぶす」という「ジョブ」を雇用しているということだ、というアナロジーで説明できるジョブ理論。
英語で言えば、"Job to be done" 。
レビット教授の「客は1/4インチのドライバーが欲しいのではない。1/4インチの穴が欲しいのだ」という有名な話とほぼ共通です。
売る方はどうしても自社の「プロダクト」に目が行ってしまいますが、そうではなく客の「プログレス」に注目しなければならない。片付けるべきジョブに注目することがイノベーションの近道だというわけです。
はたしてこれが「理論」と呼べるものなのかどうかは分かりませんが、ビジネス上では深い洞察を与えられます。

第1章 ミルクシェイクのジレンマ
第2章 プロダクトではなく、プログレス
第3章 埋もれているジョブ
第4章 ジョブ・ハンティング
第5章 顧客が言わないことを聞き取る
第6章 レジュメを書く
第7章 ジョブ中心の統合
第8章 ジョブから目を離さない
第9章 ジョブを中心とした組織

https://www.harpercollins.co.jp/job/

2018年11月11日日曜日

JTの変人採用 / 米田靖之 (2018)

「成長を続ける人」の共通点はどこにあるのか

タイトルどおり採用の話かと思ったら、違いました。正確には、採用の話も少し出てくるのですが、ほんの一部です。

この本でいう「変人」というのは「少し変わった人」ですが、「おもしろい人」というのが一番近いのではないでしょうか。
自分がおもしろい人になって、おもしろい人の繋がりをつけていくと仕事も面白くなる。会社もおもしろい人を大切にするとイノベーションにつながる。職場がおもしろくなると業績も上がる。そんな内容の本でした。
そういう意味では、人事や採用の本ではなく、イノベーションや、若い会社員に向けた仕事に向き合う姿勢を説いた本だと言えます。

「変化球を投げる技術より豪速球を投げる力」とか「必要なムダを捨ててはいけない」とか「小さいけど多少褒められることを企む」とか「アイデアの二段ロケットは別の方向に飛ばす」「高速で、小さな失敗をする」「出る杭は打つよりも、杭の頭らしきものが出てきた瞬間に引っ張り上げてやった方がいい」とかなかなかおもしろい格言がいっぱいであるところも、著者の「おもしろい」ところかなと思います。

遊び心を持って、面白く仕事をしている人って、かっこいいですよね。

https://www.kadokawa.co.jp/product/321712000869/
https://docs.google.com/document/d/1mMEypYQVObg8j7PZFf8XDLj35DppoAWFua4oB7Dhexo/

2018年11月6日火曜日

真理のことば ブッダ / 佐々木 閑 (2012)

NHK「100分で名著」を本にしたものですので、非常に読みやすく、かつ分かりやすい本でした。
ブッダの言葉を詩の形にして四百二十三句集めたのが「ダンマパダ」で、それを日本語に訳すと「真理のことば」だそうです。

ブッダの思想を要約すると、
  • この世の中は全て苦に結実していくという「一切皆苦」
  • すべてのことは因果で影響し合っており変化するものだという「諸行無常」
  • 人間はいくつかの機能が結びついたものでその中心となるような自分というものはないという「諸法無我」
で言い表せます。

この中で一番分かりづらいのが「諸法無我」です。「この世の一切の事物は自分のものではないと自覚して、自我の虚しい主張と縁を切った時、執著との縁も切れ、初めて苦しみのない状態を達成できる」とのことです。世界の中心に自分を置かない、そう捉えることで、何の偏見もなくありのままを理解できる、ということかもしれません。いずれにしてもうまくイメージできない言葉です。2500年前の人がこういった境地に達したというのは驚愕です。

幸せな時が続いて欲しいと欲するから執着が生まれ、苦となる。自分を中心に物事を考えるから欲が生まれ、苦となる。そういう理解でいいのでしょうか?
熱力学第二法則、エントロピー増大の法則をベースとした人生哲学に思えます。