2020年9月27日日曜日

ソラリス / スタニスワフ・レム (1961)

Solaris / Stanisław Lem

映画で見る宇宙の生命体(主に知的生命体)が、何か地球の生物に似ているのに、いつも違和感を感じてました。

眼が二つあったり、手足があったり、言葉を喋れたり。

地球上の生物の形は、必然なのか偶然なのか。

生命のためには、水が必要というが、本当なのか。

知性は、たんぱく質でできたニューロン細胞の中に宿っているが、この物質的なフォーマットが必要なのか。果たして知性とは何か。精神とは何か。

レムのこの小説は、まさしくそういう疑問に正面から取り組んだ、ぶっ飛んだ作品です。


惑星ソラリスの「海」は、人間から見ると「知性」のように見える振る舞いをします。

形態としては「海」であり、まったく人間の形態と違います。

人間の記憶に働きかけて、一番深い意識のものを複製します。

意識があるようにも、ないようにも捉えられます。

人間の常識とはかけ離れすぎています。

ニュートン力学で見る世界に対して、アインシュタインの世界は理解を超えているのに似ています。自分の身の丈以上のものは理解しがたいのです。旧世界はコペルニクスを理解できず、地球上の力学はアインシュタインを理解できず、アインシュタインは量子力学を理解できませんでした。


小説としては、ディテイルを書き込むスタイルで、読み進めるのにかなり努力が必要でした。伊藤若冲の絵は、微細が素晴らしいですが、これが全体のイメージを決定づけています。そぎ落としていくのもいいですが、必要以上に詳細化するのもスタイルなんですね。


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