2021年5月20日木曜日

君主論 / ニッコロ・マキアヴェリ (1532)

Il Principe /  Niccolò Machiavelli

マキアヴェリが士官のために書かれた、君主が力を発揮して国を支配するためにどうしたらいいのかを論じた古典です。

過去の君主を類型化して、汎用化を図ろうとしたものです。

日本で言えば、戦国時代の大名のあり方なんかを書いたもののように思いました。
下克上あり、恐怖政治あり、暴力がものを言う世界での生き残り方に近いように思いましたので、世間一般に言われているほどひどい表現はなかったのが正直な感想です。

全体は、論ずるテーマによっていくつかのグループに分けられ、前半は国あるいは軍事の側面で書かれています。興味深かったのは、後半の君主の資質に関するグループです。
「愛されるより恐れられる方がはるかに安全である」
「運命の風向きと事態の変化の命じるがままに、変幻自在の心構えを持つ必要がある」
「決断力のない君主は、当面の危機を回避しようとするあまり、多くの場合中立の道を選ぶ。そして、おおかたの君主がほろんでいく」
とまあ、色々な定説に溢れていて、そういうシチュエーションになったとき、ああそういやそんなこと「君主論」に書いてたな、と思い出しそうな感じです。

ちなみに、本来タイトルはなかったそうで、タイトルは本の内容から他人によってつけられたようです。僕はイタリア語は全くわからないのですが、Il Principe とは The Prince ということらしいです。


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2021年5月8日土曜日

星を継ぐもの / ジェイムズ・P・ホーガン (1977)

Inherit the Stars / James P Hogan

宇宙をテーマにした壮大なSFです。面白い!

太陽系をステージにしているので、宇宙全体の広がりは限られますが、時間の単位が想像できないくらい長大です。

フィクションとはいえ、あくまでリアルで、科学に立脚しています。これ、ホントじゃないの?と思うくらいです。
こういうのをハードSFと言うらしいのですが、SF初心者の私には違いはよく分かりません。
宇宙物理×生物進化学×謎解き×SFってところでしょうか。

月で発見されたヒトの死体が5万年前のものだった、というスタート時点でもう引き込まれます。
サスペンス的に、謎解きが続き、長編小説ですが最後まで楽しませてくれます。
ガニメデにまで行って、しかもそこで発見された宇宙船が1,200万年前。
エピローグで出てきた巨人と、ガニメデで発見された巨人は関係があるのか?
他の動物と比べて超越している人類の起源は?
あとから地球の衛星となったと言われる月の存在は?
途中まで「こうじゃねえの?」と答えが見つけられないまま、フィナーレで全貌が明らかになるところは、ストーリー展開が素晴らしいんでしょうね。

細かく見ると、そんなの成り立たないだろう、と思いますがエンターテインメントとしては十分です。
これ、映画化されてないんですかね?いかにも映画的な描写で、映画向きだなあと思うのですが。

1981年第12回星雲賞海外長編賞


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