2022年6月2日木曜日

歴史の失敗学 / 加来耕三 (2019)

25人の英雄に学ぶ教訓

タイトルには「失敗学」とありますが、決して失敗ばかりを集めたものではありません。
なんとなく教訓めいたものも多くありますが、どちらかというとエピソード集、あるいは英雄の人生のダイジェスト、と言ったものでしょうか。

超有名人もいれば、僕のような素人ではあまり知らない、尼子経久、立花宗茂、石川丈山などの人も取り上げられていて、なかなかおもしろく読めます。

中でも一番興味深かったのは、武田信玄の弟信繁が戦死したことがその後の武田氏滅亡へつながったという考察です。
家中のバランスを取り仕切っていたナンバー2がいなくなったことにより、嫡男義信との確執、派閥が生まれ、結局廃嫡しなくてはならなくなってしまった。結果、信玄の次の代で滅びてしまったことの元凶がここにある、というものです。確かに子は父親を越えようとして反発するものですから、そうではない中立あるいは追従する人がナンバー2である必要は高いんでしょうね。

秀吉における秀長の存在も同様でしょう。
秀吉はナンバー2がいなくなった途端暴走し始めたとも言えます。

皆英雄とはいえ、人間くさく欠陥があるところが魅力でもあります。


第一章 天下取りを逃した傑物 

  • 本音を漏らしたための大失敗「すべてうまくいくはずだった黒田官兵衛」 
  • 理念先行が実利主義に敗れるとき「時をかけて武将を従えた家康に負けた石田三成」 
  • 才能より信頼「後世に名を残すしかなかった真田幸村」 
  • 攻める事業も継続は簡単でない「曹操 ~三国志・赤壁の戦い~」 
第二章 部下や身内の心を読めなかった天才 
  • 優秀ゆえの近視眼「下剋上に踏み切れなかった太田道灌」 
  • 切れすぎるリーダーの悲劇「閃きが理解されなかった上杉謙信」 
  • 身内の敵に気付かなかったミス「浅井長政は中立と読んだ織田信長」 
第三章 分をわきまえられなかった逸材 
  • 成果への固執「兄・頼朝の心が読めなかった源義経」 
  • 最後は身体「自分の健康を信じすぎた豊臣秀吉」 
  • 絶好のチャンスも先がなくては生かせない「"天下布武"には到底及ばなかった明智光秀の三日天下」 
  • 目的が中途半端さゆえの過ち「韓信 ~"国士無双"最後の嘆き~」 
第四章 後継リーダーを育てられなかった名将 
  • 孫かわいさに教育を怠ったその末路「下剋上で太守になるも承継できなかった尼子経久」 
  • 甲斐源氏嫡流、武田氏滅亡の主因「第四次川中島の戦いで実弟・信繁を失った武田信玄」 
  • 孫では間に合わない「文武の若武者、信親を失った長宗我部元親」 
第五章 思い込みを省みない一徹者 
  • 多勢が勝つの思い込み「情報戦を軽んじた今川義元」 
  • 新たな時代到来の不覚「織田家の行く末を考え、足をすくわれた柴田勝家」 
  • "中立"はなかった「勇ましさに流された長岡藩士・河井継之助」 
第六章 現状に甘んじたふがいなさ 
  • 気働きができなかった報い「クビになった織田家方面軍司令官   佐久間信盛」 
  • 先代が残した最強の城も無力化「最後まで戦場に姿を見せなかった総大将・豊臣秀頼」 
  • セキュリティーを怠ることの恐怖「薩長同盟に逆転を許した徳川慶喜」 
第七章 時代に翻弄された瞑想者 
  • 選択肢はもうなかった「自ら生命を絶つ千利休最後の思い」 
  • 時代を変えながら時代に呑まれる「最後は天命を待つのみとなった西郷隆盛」 
第八章 失敗で問われる「学ぶ」姿勢 
  • 関ヶ原を制した導因「三方ヶ原の大敗北から学んだ徳川家康」 
  • 失敗後も情勢を察知しチャンスを待つ「関ヶ原の敗戦から返り咲いた奇跡の武将、立花宗茂」 
  • 失敗に学び時代を先取り「先駆けの功を咎められて転身した石川丈山」 

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