2016年8月21日日曜日

中国(チャイナ)4.0 爆発する中華帝国 / エドワード・ルトワック (2016)

戦略家ルトワック氏の来日時インタビューを本にしたもの。
戦争の面から見た中国、ということだし、著者の少し偏向した見方を反映したものでもある。

氏によると、2000年代の初頭は、中国は周囲の国と協調を重んじる平和国家だった(チャイナ1.0)のが、経済の台頭とともに対内的志向を強くして、周辺国と敵対する強硬路線になり(チャイナ2.0)、政権交代と同期して、少し矛を収め、敵対に強弱をつけてきた(チャイナ3.0)という経過をたどっているとのこと。
氏の主張は、チャイナ1.0に戻れ、ということで一貫している。
中国は大きな戦略のもと動いているのではなく、対外音痴で戦略のないまま、国内向けの政治メッセージのために揺れている、ということのようだ。

習近平はオバマ大統領との会談で、G2(2大国による世界支配)を持ちかけたが、無視され、逆に周辺国に包囲網を築かれている。
氏の論法で独自なのは、大国は小国に勝てない、ということだ。ベトナム戦争しかり、イラク戦争しかり、日露戦争しかり。中国はそれをしっかり認識した方がいい、ということである。

一番面白いと思ったのは、主題からそれるが、習政権の腐敗防止運動は共産党を弱体化する、という論だ。鄧小平以降、政治的に成長を加速させることができれば、裕福になれる、という構図だったものを根本から崩そうとしている、ということらしい。そうなれば共産党に優秀な人材が集まらなくなり、早晩共産党は弱体化していくだろう。習近平はそこまで読んで、この運動を推進しているのか?

ちょうど中国に出張するので読んでみたが、経済問題ではないのでそれほど参考にはならなかった。
しかし、マカオでは腐敗防止運動の影響がモロに来ていて、カジノの売り上げが激減しているそうだ(それでも世界一らしいが)。

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