2018年1月30日火曜日

確率思考の戦略論 / 森岡毅、今西聖貴 (2016)


USJでも実証された数学マーケティングの力


前半のマーケター森岡さんのパートは読みやすかったのですが、後半のリサーチャー今西さんのパートになると、途端に読み進むのが難しくなりました。これは単純に数式が多くなったからです。

しかし、この本で言う「数学マーケティング」の力はよく分かります。数学の力を使って確率、統計、分析、予測により経営の意思決定をする重要性ですね。
確率、統計によって戦略を立て、感情を排除して実行することが大切だと著者は言います。熱に数字を込めるのではなく、数字に熱を込める、とも言います。
アートではなくサイエンスだから再現性がある、伝えることができる、ということだと思います。

こういうのが自分でできると、いいなあと思います。ただ、大概のことはある程度までできるような気がしますが、この数式を伴う「確率・統計」については、まったくできるような気がしません。

森岡さんは、72年生まれだから僕より6才年下。数学を愛するマーケターですが、米国P&Gに勤めていた時も、数学を駆使するマーケターはさすがに米国でもいなかったらしく、少し安心しました。

2018年1月20日土曜日

日本の人事を科学する / 大湾秀雄 (2017)

因果推論に基づくデータ活用


これはなかなか革命的な本でした。

統計分析の手法の人事分野への適用が主題の中で、具体的展開として「女性活躍推進」「働き方改革」「採用」「定着率」「中間管理職」「高齢化」を扱っています。それぞれの統計手法も異なっています。

ある会社で分析したところ、「採用時の試験結果とその後の活躍には関連性は見られない」とか「採用した人を母集団にすると誤った分析結果が導かれる」とか「360度評価と業績評価への関連性はない」とか、そういったことを「事実」として捉えられたら、その後のアクションを考えるときに、深い論考ができるだろうな、と思いました。

その事実からどう原因等を推論するか、というのがミソになってきますが、そこは統計では出てきません。統計と分析・推論のインタラクションが必要ですが、将来のAIと人間の役割分担についても示唆があるように思えます。

ただ、統計的数式は僕には難解で、その意味で言えば理解半分といったところでしょうか。言わんとするところは分かるのですが.....
こういうのができたらカッコいいなあと思います。

2018年1月17日水曜日

梅原猛の『歎異抄』入門 (1993)

私は専修念仏の一門の徒ですが、正直浄土真宗の教えを全く知りません。
お経を見たことはありますが、漢字の羅列に何の意味も見出しておりませんでした。

『歎異抄』というのは、真宗の経典ではなく、親鸞の弟子の唯円が、自分の師の言ったことを書き残し、本来の宗旨から「異なったことを言う人がでてきていること」を「嘆く」書だそうです。全部で18条の短い文書なので「抄」というのでしょう。

長いこと本願寺の秘書として表に出されてこず、明治以降に衆人の知るところとなったもののようです。

ただ、これを読んでもさっぱり宗旨は理解できません。
要は、
  • 仏を念ずれば、阿弥陀さまが極楽浄土へ連れて行ってくれる
  • 浄土へ行くのは自力ではなく、阿弥陀さまの不思議な願いによるもの
  • 善悪は業縁の違いによるほんの少しの違い、阿弥陀さまは善悪関係なく救ってくれる
といったことのようですが、この悟りはすっとは入って来ません。
煩悩がある人ほど仏が救ってくれる、悪人ほど救ってくれる、というのは平安から鎌倉への移行期の戦乱の世の中であればこそ説得力があったのでしょうか。確かに善と悪を判断できるというのは傲慢かもしれません。

阿弥陀仏への強い信頼は、神との心のつながりが中心とするキリスト教と近いものがあるように思います。

大学時代に「歎異抄研究会」なるものに熱心に誘われたことがあるのを思い出しました。

2018年1月8日月曜日

千の顔を持つ英雄 / ジョゼフ・キャンベル (1984)

この長大な神話からの引用によって著者が言いたいのは2つ。
  1. 英雄の神話は「日常世界から危険を冒して人為の遠く及ばぬ超自然的な領域に出掛ける。出掛けた領域で超人的な力に遭遇し決定的な勝利を収める。そして英雄はかれに従う者たちに恩恵を授ける力をえて、この不思議な冒険から帰還する。」という形式によって成り立っている。
  2. 英雄はあらゆるところに偏在し千の顔を持っている。すなわち、それは現代の我々においても内在している。
と理解しました。

引用されている神話がすべて1つ目のような形式を取っているとは思えませんが、典型的な物語の形式としてはそうかなと思います。
我々は人生の旅において、何らかの印象的な事象に立ち向かい、それを克服することによって成長し、新しい未来やリーダーシップを得る、そういうことかもしれません。

ちなみに、ギリシャやローマ、イギリスの神話より、釈迦などの東洋の物語により共感を感じました。