2018年2月26日月曜日

その問題、経済学で解決できます。/ ウリ・ニーズィー; ジョン・A・リスト (2014)


The Why Axis: Hidden Motives and the Undiscovered Economics of Everyday Life


昨年のノーベル経済学賞はシカゴ大学リチャード・セイラー教授が受賞し、行動経済学に注目が集まっているところですが、この本も行動経済学に根ざしたものです。
ユニークなのは、実地実験の徹底です。いろいろな仮説の証明を、すべて実地実験でやろうという。
  • 男と女の経済的成功の差はなぜ起こるの?
  • 人はなぜ互いを差別するの?
  • 貧しい地域で高校の中退率を下げるには?
  • ワインをより高く売るには?
等々、一見経済と無関係な世界を、インセンティブという切り口で仮説を立て、実地実験で実証していく、そんな事例満載です。
しかも単純なインセンティブではなく、インセンティブはより注意深く使う必要があるらしいのです。でないと全く逆の効果を生んでしまう可能性もあります。

https://docs.google.com/document/d/1GM6CRtziXpa4YTBof0-6hyCgg3nESRRPrsSAspk8cc4/

2018年2月12日月曜日

図説 地図とあらすじでわかる! 聖書 / 船本弘毅 監修 (2009)

今まで全く聖書に興味がなかったので、「ああ、そうだったのか」ということは多くありました。

これを読むと、旧約聖書というのは、ユダヤ人の古代の歴史書なんですね。日本でいうところの「日本書紀」とか「古事記」のような。メソポタミアから起こり、エジプトに行き、モーセに率いられて約束の地「カナン」に行く。その間「アダムとイブ」「エデンの園」「カインとアベル」「ノアの方舟」「バベルの塔」など、どこかで聞いたことのあるようなエピソードが満載です。そしてついにイスラエル王国をつくり、ミケランジェロの彫像で有名な「ダビデ」や「ソロモン」が王になって全盛を極めますが、他国に攻められて没落していく。
戦後、キリスト教国家がこぞってイスラエルの建国に尽力した原動力が旧約聖書にあることがよくわかります。

そして、イエス(イースス)の登場。ここからが新約聖書の世界ですが、ちなみに「約」というのは神との契約のことのようで、旧約ではモーセの十戒のようなものが契約のようです。
超人的な能力を発揮したり、死んだあと復活したり、という超常現象も書かれてあるようですが、意外と人間臭いイエスの姿があり、意外でした。親との関係はそんなに良くなかったとか、十字架にかけられたが結局軌跡は起きなかったとか。弟子のダメっぷりも面白いところです。

結局、旧約での神はユダヤ人の神(選民思想)でしたが、新約の神は全ての国、全ての人の神と捉えたのが大きな違いで、イエスの教えの特徴は「愛」です。貧しい人や身分の低い人にも救いを与えるところは、仏教にも通ずるところがあります。
親愛のしるしとして口づけするのはキリスト教からきているんですね。

初期の布教活動においては、ローマ帝国などに迫害を受けますが、他の神や帝国の皇帝を崇拝しない、という排他主義の強さがキリスト教を生き残らせたようにも思います。イスラム教の原理主義が問題視されることがありますが、すべての宗教は迫害への抵抗としての団結力と、他宗教への戦いを原則としているのだと感じました。

デイビッド、エイブラハム、サミュエル、ソロモン、マイケル、ガブリエル、マリア、ジョン、フィリップ、アンドリュー、マシュー、ピーター、トーマス、シモン、ジェームズといった名前は全て聖書から来ていて、その影響力の大きさも分かります。

2018年2月6日火曜日

会社人間が会社をつぶす / パク・ジョアン・スックチャ (2002)


ワーク・ライフ・バランスの提案


この本が出されたのは、なんと2002年。今から15年も前になります。
今でこそ「ワーク・ライフ・バランス」は共通語ですが、当時の日本ではなじみのない言葉だったと思います。僕がまだブラック業界であるIT業界にいたころです。その後、5年ほどしてから部下が「ワーク・ライフ・バランス」という言葉を言い出したように記憶しています。

90年代初頭のアメリカでは、不況によるレイオフなどで社員のモラルが下がる中、「ワーク・ライフ・バランス」に取り組むことが回生の近道であることを悟ったこと、そして共働きが一般的になってきたこととIT技術が発展したことが「ワーク・ライフ・バランス」が拡がった背景にあります。

フォード財団のプロジェクトの紹介が最も印象に残りました。制度やプログラムではなく仕事そのものの見直しに焦点を当てた取り組みであり、意識・風土改革(既成概念の見直し)に続き、仕事のやり方を見直すステップで進めたようです。当時はやっていた「リエンジニアリング」との違いを、社員と企業のwin-winの関係性に求めています。

この新しい考え方を日本にも紹介しようという意図でこの本は書かれたと思いますが、十数年を経て、今の日本は「働き方改革」の大合唱です。ただそこにあるのは残業時間削減や年休取得率向上といった外形の枠ばかりであり、社員の充実した人生へのサポートや仕事の見直しは置き去りにされています。だから、社員側としては「やらされ感」「押しつけ感」しかないのかもしれません。

15年前に書かれた本にすべての解が書かれてあることに驚きました。

http://book.asahi.com/reviews/column/2011072801357.html
https://drive.google.com/open?id=10zJOtRax5UxjcKCEnjGTgiAaZOR0AeHIg30qVozzdQ8