2018年10月29日月曜日

巨匠に学ぶ構図の基本 / 視覚デザイン研究所編

――名画はなぜ名画なのか?

こんな面白い本は久しぶりです。アートは構図だ、ということに改めて感心したと同時に、構図に対して僕がほとんど何も知らないことに驚きました。

また、中学の時に、東京オリンピックのポスターが三角構図だということを教えられ、そのデザインに感激たことを思い出しました。改めて調べてみると、このポスターのデザイナーは亀倉雄策で、先日読んだばかりの江副浩正の本にもかなり出てきてました。

主役が中央にない構図、地平を低く空を大きくとった構図、主人公の後ろの空間が大きい構図、縦の線ばかりの構図、逆に斜め線だけの構図...絵の作者はいろいろ考えて構図を考えてるんですね。印象派なんて、見たままの風景を描いてるようで、実はかなり考えているのだと分かりました。

見る楽しみ、構図を考える楽しみが増えました。

名画の3条件
第1編 構図の基本型 構図の9型式
第2編 構図の組み立て 構図の14要素
第3編 主役を引き立てる 絵画は5役4景でくみたてる
第4編 人体のメッセージ 視線 手足

2018年10月24日水曜日

ご冗談でしょう、ファインマンさん / R.P.ファインマン (1985)

"Surely you're joking, Mr. Feynman!"

Adventures of a curious charactor

by Richard P. Feynman with Ralph Leighton

実はファインマン氏の物理学的功績は何も知りませんでした。ノーベル賞をもらっているのも初めて知りました。僕が生まれる前、1965年に、朝永教授と同じにです。
この本では、幸運なことに物理学の内容はほとんど出てきません。ファインマン氏の人生のエピソード集といってもいいのではないでしょうか。

ファインマン氏の独特な人生への向き合い方に感銘を受けます。
権威は考慮せず、物事を公平に平たく考える。人の作った公式によらず、可能な限り自分なりの考えで物事を理解しようとする。物理学も楽しむ、遊ぶ。いろいろなことに興味を持ち、深入りする。
学者であることの最も正しい姿勢であると同時に、人生の達人の姿勢だと思いました。

実際の彼に会ったこともありませんし、話を聞いたこともないので、本当は偏屈で、付き合いづらい人かもしれませんが、教授の授業はいつも人気だったようですので、この本で表現しているように、フェアでユーモアあふれる人物だったんでしょうね。

物理学だけでなく、サンバのボンゴドラムや絵を描くことものめり込み、ラスベガスを観察したり、教科書の選定を頼まれれば、一生懸命に取り組み、ヌード喫茶のお得意様でもある。本の副題にあるように、curious だと思います。どうせ curious なら、ここまで curious になるべきですね。
​ファインマン氏は「ファインマンと聞いたとたん思い出してもらいたいのは、ノーベル賞をもらったことでもなければ、理論物理学者であったことでもなく、ボンゴドラムでもマンハッタン計画でもない。僕が好奇心でいっぱいの男だったということ。それだけだ」といつも言っていたようです。

また、最初の奥さんとの間で「人がどう思おうとも、ちっとも構わない」というモットーを決めていたそうで、これはこれで言うは易し、行うは難し。それを実行していることが素晴らしいことだと思います。

最後の解説で、江沢洋教授はこう書いています。「彼については、『愉快な人生』などいろいろに言われている。確かに彼は自分を彩り豊かに語った。読者は愉快な人物を想像するかもしれない。しかし、それは彼の外面でしかない。ほんの短い接触しかなかったが、ぼくはそう思う。彼が多くの語りの中で本当に言いたかったことは、とらわれない発想の価値だと思う。そして、追及の執念の力。読者は彼の語りの行間を読まなければならない。」

2018年10月1日月曜日

定年後 / 楠木新 (2017)

50歳からの生き方、終わり方

これは、定年後の生き方、というよりは人生の書でした。

この本で分かったことは2つ。
1つは、定年は断絶だということ。定年前の仕事の連続を期待してもダメ。会社は退職した人に何か聞いたりしないし、続けて欲しいと誰も思っていない。全く違う人生を生きなければならない。
2つ目は、定年後は孤立するということ。会社を通じて社会とつながっていた人は、会社がなくなると社会とつながるつてがなくなる。会社のようにいろんな年代の人と話すこともなくなる。

今の甘い考えで、大した人脈のない僕のことをズバリ言い当てているようです。
そう思うと、会社が手取り足取り手を引いてくれた会社人生と違って、何もかも自由、自分で切り開いて行く必要のある定年後の方が、本当の人生に思えてきます。

何かを始めるのは、子供の頃に好きだったこと、得意だったことに立ち返るのがいい、とのこと。どうせやるなら、お金を稼げるのを目指せ、と著者もアドバイスを受けたと言います。趣味に生きるよりは、人の役に立ちたいものです。

しかも、50歳くらいから始動しなければいけないようです。僕はもう既に出遅れています。
自分の興味や得意なものをいくつかピックアップしてかなければいけません。
ビジネス書や自己啓発書を読んでいる暇はない、ゴルフをやっている暇もないかもしれません。それこそ選択と集中かな。でも息抜きも必要。

『定年後』/楠木新インタビュー