2018年10月24日水曜日

ご冗談でしょう、ファインマンさん / R.P.ファインマン (1985)

"Surely you're joking, Mr. Feynman!"

Adventures of a curious charactor

by Richard P. Feynman with Ralph Leighton

実はファインマン氏の物理学的功績は何も知りませんでした。ノーベル賞をもらっているのも初めて知りました。僕が生まれる前、1965年に、朝永教授と同じにです。
この本では、幸運なことに物理学の内容はほとんど出てきません。ファインマン氏の人生のエピソード集といってもいいのではないでしょうか。

ファインマン氏の独特な人生への向き合い方に感銘を受けます。
権威は考慮せず、物事を公平に平たく考える。人の作った公式によらず、可能な限り自分なりの考えで物事を理解しようとする。物理学も楽しむ、遊ぶ。いろいろなことに興味を持ち、深入りする。
学者であることの最も正しい姿勢であると同時に、人生の達人の姿勢だと思いました。

実際の彼に会ったこともありませんし、話を聞いたこともないので、本当は偏屈で、付き合いづらい人かもしれませんが、教授の授業はいつも人気だったようですので、この本で表現しているように、フェアでユーモアあふれる人物だったんでしょうね。

物理学だけでなく、サンバのボンゴドラムや絵を描くことものめり込み、ラスベガスを観察したり、教科書の選定を頼まれれば、一生懸命に取り組み、ヌード喫茶のお得意様でもある。本の副題にあるように、curious だと思います。どうせ curious なら、ここまで curious になるべきですね。
​ファインマン氏は「ファインマンと聞いたとたん思い出してもらいたいのは、ノーベル賞をもらったことでもなければ、理論物理学者であったことでもなく、ボンゴドラムでもマンハッタン計画でもない。僕が好奇心でいっぱいの男だったということ。それだけだ」といつも言っていたようです。

また、最初の奥さんとの間で「人がどう思おうとも、ちっとも構わない」というモットーを決めていたそうで、これはこれで言うは易し、行うは難し。それを実行していることが素晴らしいことだと思います。

最後の解説で、江沢洋教授はこう書いています。「彼については、『愉快な人生』などいろいろに言われている。確かに彼は自分を彩り豊かに語った。読者は愉快な人物を想像するかもしれない。しかし、それは彼の外面でしかない。ほんの短い接触しかなかったが、ぼくはそう思う。彼が多くの語りの中で本当に言いたかったことは、とらわれない発想の価値だと思う。そして、追及の執念の力。読者は彼の語りの行間を読まなければならない。」

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