2016年5月3日火曜日

10.8 巨人vs.中日 史上最高の決戦 / 鷲田康

確かこのとき僕はキャンプに行っていたと思います。山の中は結構寒く、こんな時期にキャンプに来たのを後悔しました。
ペナントレース終盤で2位のカープの優勝がなくなった時点で、プロ野球に興味を失っていたので、ジャイアンツが優勝したとラジオで聞いても、ああそうか、程度だったと思います。

この本を読もうと思ったのは、テレビ番組でこの試合を取り上げているのを見たからです。
そこには、最高の舞台を楽しんでいる長嶋監督と、最高の舞台で使ってくれたことを意気に感じて活躍している桑田投手の姿がありました。長嶋には人間的魅力を感じているものの、監督としては評価していなかったのですが、少し見方が変わりました。

この本でも、槇原、落合、桑田らと人間的信頼関係を結び、試合前に自ら選手たちを鼓舞する長嶋の姿があります。監督辞任の危機感を選手たちが共有し、監督を中心に戦う戦闘集団になっていった経過が、多くの証言をもとに構成されています。

ハイライトはやはり桑田とのやりとりです。試合前日に「痺れるところで使うからな」と伝え、7回から桑田を投入します。見事3回を抑えた桑田は、胴上げが終わってレフトスタンド側に走る長嶋を捕まえ、指を1本立てて「(日本シリーズで)もう1回やりますよ、もう1回」と興奮気味に言います。
指揮官は、最高の舞台を用意してそれを自ら楽しみ、主役である選手たちに最高の活躍を期待し、選手たちはその期待に応える。そんな経験ができたらいいだろうな、と思います。

(中日サイドの証言も多くありますが、いつも通りの野球をやろうとした高木監督と、特別の試合を演出した長嶋監督の対比に使われているように思います。ここに書かれてあるのは結果論なので、本としては「江夏の21球」のようにもう少しジャーナリスティックな部分もあってもいのではないかとも思いました。)

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