2017年5月11日木曜日

戦後日本海運造船経営史 5 造船業の復興と発展 世界の王座へ / 寺谷武明 (1993)

1993年に出たこの本は、その20年前、1970年代までの、日本の造船が絶頂に上り詰めるまでを描いています。

まず、戦中から始め、その戦標船の経済性が基本になり、戦後の造船の基礎になったことが描かれてあります。
戦後苦しい時代を経て、復員船、漁船、政府による保護、朝鮮戦争、中東の石油発掘からのタンカーブーム、スエズ危機などにより、造船業は発展を遂げていきます。
土壌としては、日本の造船技術者の仲間意識により、会社を超えた技術的なつながりにより、生産プロセスや溶接技術の開発が進んだことも大きいようです。

また、戦後の日本の造船業界は、石川島播磨がリードしていったようにも書かれてあります。石川島と播磨の合併(土光敏夫)、生産プロセスの革新(真藤恒)、定型船の連続建造など。特に真藤恒については多くのページを割いています。NBC呉というアメリカ企業の中で、徹底した合理的な考えを叩き込まれ、革新的なアイデアを試していく姿はカッコいいですし、それが日本をリードして成功していくということですから、拍手を送りたくなります。

日本企業が成功した要因としては、技術開発(生産プロセス、ブロック工法、溶接技術)+経営環境(世界情勢)+設備投資(船の巨大化への投資)ということになるのではないかと理解しました。中でも、ライバルであるヨーロッパの造船所が、船の巨大化に伴う工場の拡張などの余力がなかったのに比べ、日本は高度成長期で新興埋立地が林立した時期と重なったことが一番の要因ではないかと思います。そういう意味では、船の大型化に賭けて成功したともとれますが、戦略というよりは、時勢的に波に乗れて、イケイケで設備投資したらうまくいった、というようにもとれます。

ここから先の、日本の造船の下降がどうなっていくのかが非常に気になりますが、現代を見ると、中韓の圧勝です。そう思えば、これも設備投資余力なのかもしれず、日本が来た道を忠実にたどっているようでもあります。

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